『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』の書評・感想記事です。読了時間は約40分でkindle版を読みました。

個人クリエイターの方におすすめの本でした。
本の概要
題名 | プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる |
著者 | 尾原 和啓 |
出版社 | 株式会社幻冬舎 |
発売日 | 2021年7月発行 |
ジャンル | ビジネス・経済 |
完成品ではなく「制作過程」を売る!
〝良いモノ〟だけでは稼げない時代の新常識インターネットによって完成品はすぐコピーできるようになった。だから完成品で差別化するのは難しい。
引用元:プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる | Amazon kindleストア
そんな時代にはプロセスにこそ価値が出る。なぜならその人だけのこだわりや哲学が反映されたプロセスは誰にもコピーできないからだ。
完成品ではなく制作過程そのものを売る。
プロセスエコノミーはこれからを生きる全ての人の武器になる。
めちゃくちゃ面白い。価値の源泉が「アウトプット」から「プロセス」に移行する。全ビジネスパーソンにとって必読です!
山口周
プロセスエコノミーは"道"を極める日本人にとって大チャンス!
けんすう(古川健介)
プロダクトはプロセスのメディアになる
一橋大学教授楠木建
第1章 なぜプロセスに価値が出るのか
乾けない世代の誕生
乾けない世代が重要視する「幸せの3要素」
「役に立つ」より「意味がある」
グローバル・ハイクオリティかローカル・ロークオリティか
所属欲求を満たすための消費活動
不安な時代のアイデンティティとしてのブランド
「信者ビジネス」の正体
世界の若者の「日本のオタク化」
フィリップ・コトラーの「マーケティング4・0」
6Dですべてのアウトプットが無料に近づく
2050年に電気代はタダになる?
物体そのものがなくなる未来
シンギュラリティ大学の「エクスポネンシャル思考」
第2章 人がプロセスに共感するメカニズム
オバマ大統領を誕生させた「Self Us Now」理論
ノーベル経済学賞学者の「システム1」「システム2」理論
デービッド・アーカーの「シグネチャーストーリー」
「人のために」という欲望
ハイネケンの最高すぎるCM
第3章 プロセスエコノミーをいかに実装するか
「正解主義」から「修正主義」へ
「幸せの青い鳥」はどこにいる?
「オーケストラ型」から「ジャズ型」へ
情報をフルオープンにして旗を立てる
クリエイターを応援してくれるセカンドクリエイター
アウトサイド・インかインサイド・アウトか
第4章 プロセスエコノミーの実践方法
1億総発信者時代の「Why」の価値
伝統文化の「心技体」
スティーブ・ジョブズ亡きあとのAppleの課題
最強のブランド「宗教」に学ぶ
サイモン・シネックのTEDプレゼンテーション
楽天で人気店になるための3つの法則
「しくじり」が共感を呼ぶ
「シンパシー」「コンパッション」という2種類の応援
ジャングルクルーズ型かバーベキュー型か
第5章 プロセスエコノミー実例集
BTSが世界市場で突き抜けた理由
ジャニーズ事務所の緻密なファン戦略
中国シャオミの「みんなで作り上げるスマホ」
メルカリでは野菜を売れ
「北欧、暮らしの道具店」が成功した理由
ゲーム配信と Clubhouseがヒットした理由
予測不能なプロセスこそ一番の果実
創業9年で10億ドル企業になった「Zappos」
広告宣伝費がゼロになる時代
Y Combinatorのオフィスアワーが生んだAirbnbとStripe
第6章 プロセスエコノミーの弊害
自分を大事にして常に「Why」に立ち返る
プロセスエコノミーは調整のレバーを間違えてはいけない
大切なのは他人ではなく自分のモノサシ
フィルター・バブルの危うさ
SNSがもたらすプロセスの肥大化
「主体」を「観客」にするな
「現実を視よ」
「Will」「Can」「Must」の順番を間違えない
第7章 プロセスエコノミーは私たちをどう変えるか
世界的ベストセラーを生んだプロセスエコノミー的な生き方
人生をEX化する
夢中の3条件
Googleの20%とマインドフルネス
2割の働きアリはなぜ砂糖を見つけられるのか
うろうろアリが生み出した Netflix
「ジグソーパズル型」から「レゴ型」へのパラダイムシフト
本書の内容はプロセスエコノミーについて、様々な例を挙げたり、アウトプットエコノミーと比較したりしながら述べられたものとなっています。
まず、アウトプットエコノミーとは映画や音楽を作って売る、それによって稼ぐという普通の人が考える商売の方法です。そして、この手法は製品の質や価格などが重要です。それを続けてきた結果、商品のすべての水準は上がり続け、よっぽど革新的な商品でもなければ水準が上がり続けた結果、かえって差が付きにくい状態となっています。差異が出せるのはマーケティングやブランディング、流通などのため、そこに力を入れられるかどうかで差が広がってしまいます。
そんな現在の状況で商品の質や価格、アウトプットそのもので戦って勝てるのは一部の人のみとなっています。そこで、本書ではその土俵では戦わずに、その商品でを作る過程で戦ってはどうかと述べています。それがプロセスエコノミーです。
イメージとしては本書で具体例として挙げられていますが、「マンガを描いている姿をライブ配信して、そこで投げ銭をもらう」とかがプロセスエコノミーです。
本の感想
この本では色々な例を挙げながらプロセスエコノミーについて説明しているのですが、その中でも印象に残った箇所を紹介していきます。
プロセスエコノミーのメリット
さて、先ほどはプロセスエコノミーとは何か、その稼ぎ方について簡単に説明しましたが、そもそもこの手法のメリットは何でしょうか。それが本書冒頭で述べられているため、引用します。
「1つ目はアウトプットを出す前からお金が入る可能性があるということです。たとえば1年かかる制作物をクリエーターが出す場合、1年間無報酬、みたいなことがありえるわけで、こうなるとまだ知名度がないクリエーターなどは大変な思いをしないといけなかったりします。」
はじめに より引用
「2つ目としては「寂しさの解消」です。」
「クリエーターなどは、1人で作業することも多く、孤独感があります。マンガ家さんやイラストレーターさんなどは特にそうです。なので、少しでも誰かとつながっているのを感じたいというのがあったりします。」
「プロセスを発信したり、ライブ配信をしたりすることで、少しでも見てもらったりコメントをしてもらえるだけで、そこがだいぶ和らいだりします。」
「そして3つ目が、「長期的なファンを増やせるかも」というところです。」
「プロセスから知っているので、アウトプットされたコンテンツを一瞬で消費して忘れる、ということはなく、長期的に応援してくれる人になったりします。」
これがプロセスエコノミーのメリットです。なるほどと共感できると思います。
実は自分もこのプロセスエコノミーの形でプロジェクトを進められている方達を応援しています。最近? という括りでもないのですが、YouTubeでゲーム制作の過程を発表するのが流行っていて、面白いなと思って各動画を見ていいねしたりしています。気になる人はYouTubeで検索してみてください。海外も含め、色々な人が投稿していますよ。
例えば、このゲーム制作過程を公表するという方法はゲーム制作のお金を個人支援なり、YouTube収益などで集めることができますし、その過程で私のようなファンを集めることができるので実際のゲームができたときにより注目されやすくなりますよね。そういう点で本書で述べられているプロセスエコノミーのメリットは整合しているなと感じました。
まだ個人的にブログ制作とこのプロセスエコノミーを上手く合致させるアイデアが湧いていませんが、上手に繋げられると面白そうですよね。
ブログは基本的に長期的に見てもらうことが大事なので、相性は悪くないと思います。ただ、ブログ制作の過程を公表するというよりは、ゲーム制作過程をYouTubeに投稿するように何らかの制作過程をブログで公表する方が使い方としては正しいのかもしれませんね。あくまでブログは発表においての道具として使うイメージ。
個人で何かを作られているクリエイターの人は、このプロセスエコノミーと相性がいいと思います。結構、過程を発表して支援を受けている人は多いイメージですが、されていないという方は一度検討してみてはいかがでしょうか。
プロセスエコノミーの危険性
先ほどはプロセスエコノミーのメリットを取り上げましたが、デメリットはないのでしょうか。もちろんあります。プロセスエコノミーのデメリットというよりは、コミュニティ形成のデメリットですが。
SNS等でのプロセス発信に力を入れてコミュニティが形成されると、著者が述べる「フィルター・バブル」に入る危険性があります。
これはインフルエンサーと呼ばれるくらいの影響力を持つと、周りに賛同者が増え、意見が偏る可能性があるということです。耳障りな批判や反対意見が排除されていき、バイアスがかかってしまうということですね。
インフルエンサーに限らず、そのコミュニティに所属していると盲信的になりがちです。一度どこかで冷静になって、情報や思想に偏りはないかというのを再確認しておきたいですね。同様の結論が述べられているので結論部分を引用しておきます。
「自分のプロセスに同行してくれる人が増えれば増えるほど、「自分が見ている風景が世界のすべてだ」と勘違いしてしまうリスクがあるのです。ときどきバブルの外に足を踏み出して、自分を客観視することが大切です。」
第6章 プロセスエコノミーの弊害 | フィルター・バブルの危うさ より引用
さいごに
以上が本書の書評・感想です。
プロセスエコノミーについての説明方法が、例を挙げて~は~で成功したよね、これがプロセスエコノミーの良さ、みたいな感じなのでどこかこじつけを感じる点は多々あります。
ただ、過程を発表する、売り物にするというプロジェクトが近年増えてきているので、そういうプロジェクトを考えている方は本書を読まれて、プロセスエコノミーについて学ぶと参考になるのでよいと思いますよ。
また、自分はKindle Unlimitedで読みました。読み放題対象の本も多く、月に1~2冊も読めば元が取れてしまうので個人的にもおすすめです。

ななさきブログでは、「AFFINGER6EX」「JET(子テーマ)」などを使用しています。
・ACTION PACK3(AFFINGER6EX対応)
→「ACTION(AFFINGER6EX)」と専用プラグインのセット